天井絵

寺社の格天井などに描かれる絵画であり、場所が拝殿・本堂(内陣)などで人目に付きやすく、花鳥画や龍の絵など芸術性の高いものが多い。那須町では、台明山三光寺や伊王山專称寺、新田の薬師堂などが知られている。

三光寺(芦野・上野町)は、真言宗智山派に属し、日本三所聖天(歓喜天)の守護寺として地域の信仰の場所となっている。この聖天の本堂の格天井に高岡梧陽作といわれている花鳥図・野菜図の絵である。梧陽は、本名を佐藤梧陽といい、槐山と号した。黒羽出身で幕末から明治期に活躍した人物である。黒羽大雄寺にも梧陽の作品が残されている。

新田の薬師堂(狸久保)は、明治22年(1889)の薬師堂再建の時に御堂の格天井に板壁に描かれた。四頭の龍を中心に四季の草花と鳥、十二支の動物、寒山拾得などの人物画が64枚の格天井に描かれ、周りの高板壁には内、外共に白梅図が配されている。作者は芦野の絵師、船山長光齋で79才の時の作である。長光齋は、芦野の人で、文化年間(1804)~(1817)に生まれ、家業の経師・提灯作りの余技として絵画を研究した人物である。この御堂は江戸元禄期以前から東光薬王寺として住職もいたようであるが、明治の廃仏毀釈で一時薬師神社として信仰された。宝暦7年(1757)銘の鰐口が残されている。

專称寺(伊王野・下町)は、時宗に属し、伊王野氏の檀那寺として古くから信仰の対象となった名刹である。この本堂の天井に渋井鉄華(雲嶺)の作の花鳥図がある。鉄華は、伊王野の人で、絵を寒川雲晁、後に小室翠雲に学んだ。画室を「知足庵」と称した。

高福寺(高久本郷)は真言宗高野山派に属し、那須町をはじめ那須塩原市まで広範囲に檀家を有する寺院である。この本堂に昭和20年代に描かれた天女図がある。峰村北山氏の作品である。北山は戦前から戦後にかけて疎開していた旧黒磯市で活躍した人物である。その経歴は不明な部分が多い。そのほかに法師畑の薬師堂、上川の虚空蔵堂などにも見られ、知られざる芸術作品といえる。

名   称 天井絵
所 在 地 那須町大字寺子乙、高久甲、芦野、伊王野他
種   別 有形文化財/絵画
指   定
指定年月日