べこ石の碑(べこいしのひ)

峯岸の国道294号(旧奥州街道中)の西側に建っている。この碑は、芦野宿の問屋をつとめた戸村忠恕(とむらただひろ)が晩年になって里人に人の正しく生きる道を論すために、嘉永(かえい)元年(1848)10月建立したものである。

べこの石の名の由来は「べこ」とは東北地方の牛を称する言葉であり、この地方が東北の地と隣接しているため牛を「べこ」と呼び、石碑の形が牛の寝ている姿に似ているためと考えられる。また、碑の前面右側に人身牛首(じんしんぎゅうしゅ)の炎帝神農氏(えいていしんのうし)の姿が彫られているからとも考えられる。碑は芦野石で文字の部分で高さ140㎝・幅390㎝ほどの大きさである。

碑文の主な内容は、孝行の大切さと善行のすすめ、堕胎の戒めと生命の尊重、貧しい者への恵みの心、人の行為の根本は誠であること、物欲や自慢の戒め、備えの大切さと美食の戒め、めぐる因果を自覚すること、祖先を敬い親族を大切にすること、中庸(ちゅうよう)の大切さと立腹の戒め、禍いを生む言葉遣いの戒め等々、全文で3500字も及ぶ長文である。実例やたとえを用いながら儒教(じゅきょう)的精神を中心とした人の道を具体的にやさしく教えている。

この碑文を通して、江戸幕府末期の民情風俗や社会、経済及び当時の道徳思想を直接知ることができ歴史的文献として重要である。

名   称 べこ石の碑(べこいしのひ)
所 在 地 那須町大字横岡154
種   別 有形文化財/書跡
指   定
指定年月日 昭和47年7月15日